
日本のものづくりが直面する下請け構造や市場縮小という課題に対し、愛知県の企業が「技術の再定義」という解を提示している。一社では限界のある海外展開を、レジスタを含む4社の連携によって突破し、地方の技術資産を世界基準の価値へと変換する試みだ。
世界最大級の消費財見本市アンビエンテ2026出展 愛知の企業連合が結成した海外進出チームの狙い
2026年2月、ドイツ・フランクフルトで開催される世界最大級の国際消費財見本市「Ambiente 2026」に、愛知県の企業連合が出展する。参画するのは、創業200年の和紙問屋「柏彌紙店」、高度な縫製技術を持つ「宝和化学」、高精細印刷を武器とする「大和グラビヤ」の3社。そして、この異業種チームを束ね、戦略的なプロデュースと海外コーディネートを担うのが「株式会社レジスタ」である。
本プロジェクトは、地方企業が長年培ってきた「技術資産」を現代のデザイン文脈で再解釈し、グローバル市場へ直接提案する挑戦だ。単なる製品の展示に留まらず、海外の建築家やデザイナーとのネットワークを構築し、日本の職人が正当な評価と対価を得られる構造への転換を目指している。
中小企業の海外販路開拓を支える水平分業モデル レジスタが繋ぐ3社の強みとは
他社との決定的な違いは、伝統工芸、工業プロセス、クリエイティブプロデュースが、4社の連携によって水平分業的に融合している点にある。通常、中小企業の海外進出は単独での挑戦が多いが、本プロジェクトでは3社の強みが補完し合うことで、一社では到達し得ない高付加価値化を実現している。
例えば、和紙という素材に大和グラビヤの印刷表現を施し、宝和化学の縫製技術でプロダクトへ昇華させるといった連携だ。ここにレジスタが「世界市場の文脈」という視点を加えることで、個別の技術が世界で選ばれる理由へと変貌を遂げる。また、自動車部品の廃材活用など、欧州市場が重視するサステナビリティを組み込んだ提案も、この連携体制だからこそ可能となった。
下請けからブランドへの転換 職人の手仕事を持続させる価値再定義の哲学
この取り組みの根底には、技術を未来へ繋ぐために市場を再定義するという強い意志がある。柏彌紙店の尾関良祐氏は、変化を続けることで現代や未来にも新しい価値を見出すことができると説き、伝統を変化すべき資産と位置づける。
また、宝和化学の落合徹哉氏は、BtoBの現場で磨いた技術をBtoCへ解放することの意義を強調する。職人が世界からの直接的な評価に触れることは、技術の継承だけでなく、働く者の誇りを醸成する。レジスタはこうした3社の内発的な動機を尊重しながら、単なる輸出事業ではない、日本のものづくりが文化として自立するための仕組みを構築しようとしている。
地方企業の生き残り戦略としての異業種連携 共創が生み出す競争優位性
本事例は、停滞を感じている地方産業にとって、極めて示唆に富んでいる。
まず、自社の技術を特定の業界に縛り付けない柔軟性だ。和紙、縫製、印刷といった既存技術を、世界のライフスタイル・デザインという異なる土俵に持ち込むことで、新たなブルーオーシャンを創出している。
次に、中核となるプロデューサーを交えた共創の有効性である。リソースの限られた中小企業が、海外進出のリスクを分散しながら世界と対等に渡り合うためには、ビジョンを共有できるパートナーとの連携が不可欠だ。日本のものづくりが、価格競争ではなく価値競争で生き残るためのヒントが、この「3社とレジスタ」の共同戦線には凝縮されている。



