「かくれフードロス」年間2,000万トン超　加工現場から課題に挑む最新技術

フードテック企業ASTRA FOOD PLANは、食品加工で発生する端材の有効活用を目指し、独自の乾燥・殺菌技術を開発してきた。同社はこのほど、カット野菜製造を行う株式会社健食に「過熱蒸煎機」を提供した。

健食の生産ラインでは、キャベツ、玉ねぎなどから1日約3トンの端材が発生していた。従来は廃棄が中心だったが、今回の導入により食品パウダー「ぐるりこ®」として再活用が始まる。廃棄コストの低減とともに、新しい商品原料の創出も期待される。

過熱蒸煎機が実現する　栄養価・香りを守る高速アップサイクル

過熱蒸煎機は、数百度の過熱水蒸気を用い、乾燥と殺菌をほんの5〜10秒で完了できる。
短時間で処理が行えるため、熱による栄養価や風味の劣化が抑えられることが特徴だ。

設備は水洗いでの切り替えが可能で、複数品目の端材を同一ラインで処理できる。これにより、食品工場の実態に合わせた柔軟な運用が実現する。健食はベジブロスや新たな調味料への展開を視野に入れ、用途開発を進める構えだ。

廃棄物を利益源へ　健食が選んだ循環型ビジネスモデル

食品企業にとって、端材処理コストは見えにくい負担となってきた。一方、原材料価格は高止まりが続く。端材を活用できれば、コスト改善と環境配慮を同時に達成できる。

今回の取り組みは、従来「捨てるしかなかったもの」を価値に変える試金石となる。
設備投資を通じて利益体質を強化しながら、持続可能な供給モデルへ転換する企業姿勢がうかがえる。

ASTRA FOOD PLANは、技術提供にとどまらず「ぐるりこ®」の用途開発や販路開拓も支援するとしており、事業パートナーとして伴走する姿勢を明確にしている。

新しい食品産業のかたちへ

食品製造工程の裏側には、まだ活かされていない資源が眠る。
その価値に気づき、循環へつなぐ仕組みを整えられる企業こそが、これからの食品産業を牽引するだろう。

健食とASTRA FOOD PLANが進める挑戦は、課題解決型のビジネスが持続可能な成長を実現することを示している。未利用資源を起点にしたイノベーションは、今後ますます広がるはずだ。