
深夜0時を回っても、テレビの前から離れられない。
笑ってはいけない緊張と、いつ吹き出すかわからない爆発力。
日本テレビ系の長寿番組ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!から生まれた名物企画「絶対に笑ってはいけない」(英題「YOU LAUGH YOU LOSE」)が、世界展開へ踏み出す。フォーマット販売を担う吉本興業は、世界最大級のエンターテインメント企業Banijay Entertainmentと戦略的パートナーシップを締結した。
これにより、Banijayが持つ世界25の国と地域、約130社に及ぶ制作ネットワークを通じて、各国版のローカル制作が進められる。
24時間、笑えば即アウト 極限ルールが生んだ国民的企画
2006年から15年間、大みそか特番として放送された「絶対に笑ってはいけない」。
舞台は病院、新聞社、ホテル、空港、学校、地球防衛軍と毎年変わるが、ルールは不変だ。
笑ったら罰。
ダウンタウン、月亭方正、ココリコの5人が、24時間にわたり笑いの刺客に耐え続ける。静まり返る廊下。突如現れる芸人や俳優。わずかな口元の震え。堪えきれず吹き出した瞬間、容赦なく下されるお仕置き。
緊張と解放。その反復が視聴者を引き込み、日本の年末を象徴するコンテンツへと成長した。
2020年の「絶対に笑ってはいけない大貧民GoToラスベガス24時!」を最後に放送は終了したが、DVDや配信、グッズ展開を通じてIPは現在も生き続けている。
フォーマット販売とは何か “笑いの設計図”を世界へ
今回の海外展開の鍵は「フォーマット販売」にある。
完成した番組映像を輸出するのではない。
番組の基本コンセプト、ルール、進行、演出ノウハウ、音楽や照明のタイミングまで詳細に記した“バイブル”を提供し、その枠組み自体をライセンスする仕組みだ。
各国はその設計図を基に、現地の人気タレントを起用し、文化や笑いの感覚に合わせて再構築する。
つまり、日本発の“ルール型コメディ”が、世界各地でローカライズされることになる。
実際、松本人志が企画したドキュメンタルは「LOL: Last One Laughing」として25以上の国と地域で制作され、Banijayはそのうち11バージョンを担当。「FREEZE」も海外でローカル版が制作されている。実績は十分だ。
なぜ“笑ってはいけない”は世界で通用するのか
「笑いを我慢する」という行為は、言語に依存しない。
吹き出す瞬間の表情、必死に耐える顔、崩れる体勢。
身体反応そのものがコンテンツになる。
その構造は極めてシンプルで、同時に強力だ。
24時間という時間設定が緊張を積み上げ、罰ゲームがカタルシスを生む。文化差を越えやすいフォーマットであることが、国際展開の大きな武器となる。
世界的にフォーマットIPの価値が高まる中、日本発バラエティの本格輸出は新たな段階に入ったと言える。
日本発IPはグローバルブランドになれるか
ダウンタウンが築いてきた企画が、海外スターたちによって再解釈される可能性が現実味を帯びてきた。
もし各国版が制作されれば、その国のトップコメディアンが“24時間耐久”に挑む姿が映し出されるだろう。
日本の年末に刻まれてきた笑撃は、世界の年末へ広がるのか。
“笑ってはいけない”という逆説的ルールは、いま世界規模の実験へと進化しようとしている。



