
まだ冬の寒さが残るにもかかわらず、鼻の奥にかすかな違和感を覚える人が増え始めている。2026年春の花粉シーズンは、例年以上に早く始まり、長引く可能性が指摘されている。背景にあるのは、猛暑と気候変動。花粉症はもはや「春だけの不調」ではなく、事前の備えが明暗を分ける時代に入った。最新予測と専門家の見解から、今知っておくべき現実を整理する。
冬の終わりを待たずに始まる「異変」
まだ厚手のコートが手放せない朝、鼻の奥にかすかな違和感を覚える人が増えている。例年なら「気のせい」で済ませていた感覚だが、2026年春に向けては、そうも言っていられない状況だ。
日本気象協会が2025年12月に発表した花粉飛散予測によると、東海から北海道にかけて、スギ花粉の飛散量は平年を上回る地域が多く、「非常に多い」とされる地域も含まれる。
背景にあるのは、2025年夏の異常とも言える猛暑と日照時間の長さだ。高温と多照はスギの雄花形成を強く促す。自然界ではすでに、次の春に向けた準備が着々と進んでいた。
北日本・東日本で顕著な「大幅増」の予測
飛散量の増加は、より具体的な数字でも示されている。
ウェザーニューズが公表した予測では、北日本や東日本を中心に、2025年を大きく上回る飛散量が見込まれ、地域によっては前年比で数倍規模に達する可能性も指摘された。
前年の飛散量が少なかった地域では、その反動として「表年」の影響が強く出る。これまで症状が軽かった人や、花粉症と無縁だった人が、突然つらい症状に悩まされるケースも想定される。
花粉症はもはや一部の人だけの季節病ではなく、社会全体で備えるべき環境要因となりつつある。
気候変動がもたらす“長い花粉シーズン”
近年注目される気候変動は、花粉症のあり方そのものを変えつつある。温暖化の影響で、花粉の飛散開始が早まり、終息が遅れる傾向が報告されている。
つまり、シーズンが「前倒し」で始まり、「後ろに伸びる」。この長期化が、症状の慢性化や治療負担の増大につながる。
特に注意が必要なのが3月前後だ。春休みや卒業・入学行事など、屋外で過ごす時間が増える一方で、花粉量はピークを迎える。鼻水やくしゃみだけでなく、咳が長引いたり、気管支喘息を悪化させたりする例も少なくない。
専門家が強調する「先手必勝」の基本戦略
花粉症対策の要点は、年々シンプルになっている。それは「症状が出る前に動く」ことだ。
専門家が共通して挙げる基本は次の3点に集約される。
第一に、初期療法の徹底。飛散が始まり、違和感を覚えた段階で内服薬や点鼻薬を開始することで、ピーク時の症状を抑えやすくなる。
第二に、持病との併存管理。喘息を持つ子どもは、吸入薬の携帯や行動計画を家庭と学校で共有することが欠かせない。
第三に、曝露を減らす生活行動。マスクや花粉症用眼鏡の着用、帰宅後の洗顔・衣類の花粉除去、換気時間の工夫が基本となる。
すでに治療中の薬を自己判断で減らさず、必要に応じて医師に相談する姿勢も重要だ。
医療と技術、そして「準備」という選択肢
医療の進歩により、市販薬の選択肢は増えたが、症状に合った治療には医療機関の関与が欠かせない。鼻水やくしゃみと、鼻づまりでは有効な薬の系統が異なるためだ。
一方で、花粉を物理的に遮断する技術も進化している。鼻腔内に装着するタイプのマスクなど、日常生活に溶け込みやすい対策が登場し、「外から防ぐ」という選択肢も現実味を帯びてきた。
さらに、5歳以上では舌下免疫療法も検討できる。ただし、花粉飛散期には開始できないため、今から医師と相談し、次のシーズンを見据えて準備することが求められる。
「感じる前」に始める、新しい花粉症対策
2026年の春は、これまで以上に厳しい花粉シーズンとなる可能性が高い。
気候変動と猛暑がもたらした変化は、私たちの体感よりも一歩先を進んでいる。花粉症対策は、症状が出てから慌てるものではなく、「まだ大丈夫」と思っている時期に始めるものへと変わった。
早めの行動が、春の過ごしやすさを大きく左右する。



