
ヤングジャンプ新人漫画大賞(第36回)受賞作にAIイラスト使用疑惑。応募規約にAI禁止はあるのか、取り消しや賞金返還の可能性はあるのかなど解説。
受賞作に「AI生成イラストでは?」の声が急拡大 ※真偽不明
集英社「ヤングジャンプ新人漫画大賞」(第36回)の受賞作『御国の羽々斬様』(作者:森永侮瑠戊ン)に、SNS上で真偽不明のAI使用疑惑が急速に広がっている。
▼受賞作『御国の羽々斬様』(となりのヤングジャンプ)
https://tonarinoyj.jp/episode/2551460909505785119
作品は「佳作+月間ベスト賞+初投稿」で合計43万円を獲得。
ヤングジャンプ新人漫画大賞公式X(旧Twitter)には、以下のように講評コメントが寄せられている。
「非常に画力が高くサービス精神もあり、アクションにお色気と読者を飽きさせない努力を節々から感じます。一方で、キャラクター設定やストーリー、構成面では改善の余地が多くあり、特に状況設定が複雑すぎる上に説明が不明瞭なためすんなり読めない点はもったいないと感じました。」
しかし、公式発表直後からXユーザーの間で次のような指摘が相次いだ。
「女性キャラの顔に髭のような線がある」(2ページ目、中央の四つん這いの女性)
※話の流れ的に「男性キャラに女性のような髪型と豊満な胸が描かれている」という可能性もあり
「子どもの目が溶けて見える“AI特有のイラストの破綻”がある」(7ページ目、左下の3人の少女)
「ツノの形がコロコロ変わっている」(複数ページ)
これらは、生成AI画像によく見られる「欠損・形崩れ」と似ている点から、真偽を巡る議論が拡大している。
ただし、現時点では真偽不明の噂であるため、情報の取り扱いには注意が必要だ。
ヤングジャンプ新人マンガ大賞応募規約に「AI使用禁止」は明記なし
ヤングジャンプ公式の新人漫画大賞応募要項を確認したところ、
生成AIの使用禁止・AI作画の申告義務といった記載は存在しない。
▼週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞 概要
https://youngjump.jp/comic_award
応募条件で特に強調されているのは以下の点のみ。
・作品が未発表のオリジナルであること
・第三者の著作権等を侵害していないこと
・権利侵害の指摘が発生した場合は、発表後であっても受賞取り消しの可能性がある
つまり、現行規約は「制作手段」ではなく「権利侵害」の有無に重きを置いているようだ。
AI使用は「権利侵害」になるのか?答えは「ケース次第」
応募規約にAIの使用禁止がない以上、仮に実際にAIを使用していたとしても応募や受賞にあたって問題がないのかもしれない。
しかし、AI使用が以下に該当する場合は「権利侵害」として扱われる可能性がある。
① 他者の画像を学習したAIが生成 → 著作権侵害の可能性
生成AIの一部は、訓練データに許可なく既存作品を使用するケースがある。
そのため、応募者が「自作」として提出すると、「第三者の権利を侵害した」として取り消し対象になる可能性があるだろう。
② AIを使用した事実を「自作と偽った」と判断される場合
公募の倫理観として「創作した本人が描いた作品」であることが前提だろう。
編集部が「創作性の虚偽」と判断すれば受賞取り消し・賞金返還の判断になる可能性もあるかもしれない。
炎上した理由は「AIへの拒否感 × 画力評価 × 賞金」の3点コンボか
ヤングジャンプの応募規約にはAI使用禁止の明記がなく、問題となるのは「権利侵害の有無」に限られる。実際に作者への注意や声明発表、受賞取り消しを行うかどうかは編集部の判断に委ねられるだろう。
では、規約違反と断定できないにもかかわらず、なぜSNSでここまで騒ぎになったのか?
考えられる要因は大きく ①AIへの拒否反応、②講評で“画力の高さ”が評価された点、③賞金付き受賞による公平性への疑念の3つだ。
まず、AI生成物が日常化したことで、ユーザーの“見抜く力”も上がり、「うわっ、AI生成物だ」と直感的に拒否する反応が強まりつつある。
次に、今回の受賞作は講評で画力が褒められていたため、「もしAIなら、評価された“画力”は作者の実力ではないのでは?」という疑問が生まれやすい。
さらに、今回のように高額賞金が支払われるコンテストであれば、落選者との公平性や審査の透明性を求める声が上がるのは自然だ。
仮にAI使用が事実だったとすれば、「制度の穴」と「AI普及のスピード」が重なり、疑念が一気に拡散したと見るのが妥当だ。
漫画業界全体が「AI時代の創作の線引き」を問われる中、ヤングジャンプ編集部がどのような調査や声明を出すのか、今後の対応が注目される。



