半導体、エネルギー、商社が牽引。杜の都が育む多層産業の実力

東北・宮城は震災からの復興と都市再開発を経て、エネルギー大手とモノづくり、卸・金融・メディアが多層に並び立つ経済圏へ進化した。本稿では2024〜2025 年に公表された決算短信・官報公告・公式 IR を突合し、本社を宮城県に置く企業 25 社を売上高(銀行は経常収益)順に再編。
県内産業の骨格をなす名門企業の横顔と、地域経済の動脈がどこにあるのかを一望できるはずだ。
25 位 菓匠三全(仙台市) 売上高 70 億円〈2023/9 単〉
名門ポイント:銘菓「萩の月」を柱に“お菓⼦づくりで微笑みを”を掲げる和洋菓⼦メーカー。2023 年11 月に「菓匠三全 SDGs宣言」を公表し、①お客様へのサービス=地域活動・環境保全、②喜働の職場づくり=誰もが活躍できる職場、③堅実経営=パートナーシップ強化の3重点課題を設定した。具体策としてプラ・紙製手提げ袋を全面有料化し、収益の一部を森林保全団体「more trees」に寄付。
仙台七夕・青葉まつりなど地域祭事や少年野球大会を協賛し、文化・スポーツ振興を継続する。また社員教育と女性活躍、働き方改革、ハラスメント防止を行動計画に明記。SDGs達成へ全社員が理解・賛同する体制を敷き、老舗菓子メーカーとして“つくる責任・つかう責任”を実践している。
24 位 東北特殊鋼(大崎市) 売上高 78 億円〈2024/3 単〉
名門ポイント:航空・医療向け高耐熱鋼を手掛ける特殊鋼メーカー。1937 年創業で特殊鋼専業。エンジンバルブ用耐熱鋼と電磁ステンレス鋼「K-M57」で国内シェア No.1 を誇り、2006 年には国内特殊鋼メーカーで初めて ISO/TS 16949 を認証取得。東北大学金属材料研究所と共同で非強磁性クロム基インバー合金や燃料電池用鋼「K-M38CS」を開発するなど産学連携が濃い。2011 年にはタイに、2017 年にはインドに製造子会社を設立し海外展開を加速。同 2011 年にボッシュグループの「サプライヤー・アワード」を受賞し国際品質を評価された。表面硬化処理『キリンコート C』やクラッド鋼による振動発電材など高付加価値技術も商品化し、「特殊鋼の力で社会に新しい価値を」を掲げて次世代モビリティ・医療・半導体分野へ裾野を広げている。
23 位 阿部蒲鉾店(仙台市) 売上高 86 億円〈2023/8 単〉
名門ポイント:笹かまぼこ専業。看板商品の「阿部の笹かまぼこ」や仙台名物「ひょうたん揚げ」などが有名。1935 年創業。“仙台笹かまぼこ”の名付け親とされる老舗で、白身魚のすり身を笹形に成形して直火で焼き上げる製法が県内に広まったのは同社が始まりと公式サイトで紹介されている。看板商品「阿部の笹かまぼこ」のほか、クリームチーズ入り「チーズボール」など多彩な派生商品を開発し、百貨店催事や EC で県外販路を拡大中。仙台駅前本店には製造ラインをガラス越しに見学できるコーナーと手焼き体験スペースが併設され、観光ガイドにも掲載される食文化スポットとなっている。
サステナビリティでは仙台七夕まつりや青葉まつり、光のページェントへの協賛に加え、プロ野球楽天イーグルス・マイナビ仙台レディースのオフィシャルパートナーとして地域スポーツを支援。災害時には自社在庫を被災地へ無償提供した実績もあり、「郷土の味でまちを元気に」を掲げた社会貢献を継続している。
22 位 東日本放送〈KHB〉(仙台市) 売上高 89 億円〈2024/3 単〉
名門ポイント:1975 年開局、テレビ朝日系列(ANN)に属する宮城県域のテレビ単営局。2022 年 3 月、仙台市本町に移転した新社屋には公開スタジオ「ぐりりシアター」を併設し、報道・情報番組の一部をオープンスペースから生放送することで街と双方向の発信拠点を構築した。防災分野では県と協定し、スマートフォン向けアプリ 「KHB 防災手帳」 を提供、2024 年 6 月時点で 累計ダウンロード 14 万件(公式リリース)を超えた。アプリと連動して地上波放送に避難所開設や河川水位を割り込み表示できる体制を採用し、有事の情報伝達を強化している。
番組制作では地元高校と共同でドキュメンタリーを制作し、2023 年度の日本民間放送連盟賞・東北地区テレビ報道部門で最優秀賞を受賞。地域社会の課題を掘り下げる公共性と、災害報道の即応力が評価される民放局である。
21 位 仙台放送〈OX〉(仙台市) 売上高 92 億円〈2024/3 単〉
名門ポイント:フジテレビ系列の宮城県域局。情報番組『仙台放送Live News』とスポーツ中継で県内視聴率上位を維持。2024 年 3 月期に 4 年連続の黒字決算を確保し、独自ニュース動画をTVerへ供給して広告収益を開拓する。
20 位 東北放送〈TBC〉(仙台市) 売上高 107 億円〈2024/3 単〉
名門ポイント:JNN 系テレビ・ラジオ兼営局。自社 OTT サービス「TBC ドットコム+」は月間 250 万再生を公表し、デジタル広告を拡大。AM ラジオの FM 補完波と radiko 配信で県外聴取にも対応する。
4K 制作で楽天イーグルス中継を HDR 化し、radiko 全国配信でラジオ広告の 18%がデジタル化。
19 位 河北新報社(仙台市) 売上高 220 億円〈2023/12 単〉
名門ポイント:河北新報社は、1897年に創刊された仙台市を拠点とする地方紙で、東北地方における報道機関として長い歴史と信頼を築いてきた。特に東日本大震災以降は、被災地に寄り添った継続的な報道で全国的な評価を得ており、地域密着のジャーナリズムを体現している点が高く評価される。
発行部数 45 万部の東北ブロック紙。デジタル会員サービス「Kahoku PLUS」を展開し、紙・デジタル統合課金モデルに移行中。震災・防災報道の蓄積で 2023 年度新聞協会賞を受賞した。また、自社印刷工場を持ち、新聞の即時発行体制や地域情報の迅速な伝達を可能としており、東北の言論空間を支える「名門メディア」としての地位を確立している。
18 位 じもとホールディングス(仙台市) 経常収益 379 億円〈2023/3 連〉
名門ポイント:仙台銀行ときらやか銀行を傘下に持つ地銀 HD。じもとホールディングス(Jimoto Holdings, Inc.)は、宮城県仙台市青葉区に本社を置く金融持株会社。2012年10月1日に、仙台銀行ときらやか銀行(旧殖産銀行)の経営統合により設立された。両行の地域密着型金融を支える中核企業として、東北地方の経済活性化に寄与している 。
経営理念として「宮城と山形をつなぎ、本業支援を通じて、地元中小企業や地域に貢献する」を掲げ、地域金融グループとしての公共性と社会的使命を果たすことを目指している 。2020年11月には、SBIホールディングスと資本業務提携契約を締結し、FinTechやDX(デジタルトランスフォーメーション)分野での連携を強化している 。また、2025年3月期には、きらやか銀行の資金利益の増加や経費の削減により業績回復が見込まれ、2期ぶりに期末配当を復活させる方針を発表した。これにより、国による実質的な管理下からの脱却が期待されている 。
17 位 仙建工業(仙台市) 売上高 433 億円〈2022/3 単〉
名門ポイント:仙建工業は、1942年に創業された宮城県仙台市青葉区に本社を置く総合建設会社である。線路保守、駅リニューアルに強みを持ち、BIM/CIM を導入して鉄道工事の 3D 施工を推進。同社は、鉄道関連工事をはじめ、土木・建築・測量業務など幅広い分野で事業を展開している。特に、JR東日本のパートナー企業として、東北地方の鉄道インフラ整備や保守業務において重要な役割を担っている。同社の事業内容は、一般土木工事、一般建築工事、鉄道軌道工事、舗装工事、上下水道工事など多岐にわたり、企画・設計・施工・監理・建設コンサルタント業務を一貫して手がけている。また、一級建築士事務所としての機能も有し、公共施設や商業施設、教育機関などの建設にも携わっている。
2024年4月時点での従業員数は698名、資本金は2億5,000万円である。売上高は2024年3月期で401億円を計上しており、安定した経営基盤を築いている。事業所は本社のほか、盛岡市、郡山市に支店を構え、宮城県、青森県、岩手県、福島県に出張所や作業所を展開している。
同社は、ISO9001およびISO14001の認証を取得し、品質管理と環境保全に努めている。また、女性の活躍推進や働き方改革にも積極的に取り組んでおり、宮城県から「女性のチカラを活かす企業」として認証されている。産前休業や育児休暇、時短勤務制度の整備により、女性社員の職場復帰やキャリア継続を支援している。さらに、若手社員の育成にも力を入れており、年次研修や現場見学、グループワークを通じて、業務知識の向上と社員間の交流を促進している。これらの取り組みにより、仙建工業は、地域社会の発展と持続可能な社会の実現に貢献する名門企業としての地位を確立している。
16 位 サトー商会(仙台市) 売上高 476 億円〈2023/9 単〉
名門ポイント:株式会社サトー商会は、1948年に創業し、1950年に設立された、宮城県仙台市宮城野区に本社を置く業務用食品専門商社である。同社は、製菓・製パン材料、学校給食・産業給食資材、ホテル・レストランなどの外食資材、弁当・仕出し資材、惣菜資材など、業務用食品全般を取り扱っている。また、一般消費者向けに業務用食品を販売する「キャッシュ&キャリー(C&C)」店舗も展開しており、宮城県内を中心に東北地方で広く親しまれている。
2024年3月末時点での資本金は14億580万円、従業員数は889名にのぼる。同社は、常温・冷蔵・冷凍の3温度帯に対応した商品管理体制を整備し、約22,000アイテムを取り扱っている。また、納品トラックも3温度帯に分かれた車両を使用し、品質管理を徹底している。これらの取り組みにより、サトー商会は、東北地方を代表する業務用食品専門商社としての地位を確立している。
15 位 フィディア HD(仙台市) 経常収益 499 億円〈2023/3 連〉
名門ポイント:フィデアホールディングス株式会社(FIDEA Holdings Co., Ltd.)は、宮城県仙台市青葉区に本社を置く金融持株会社である。2009年10月1日に設立され、東証プライム市場に上場している。資本金は180億円、連結総資産は約3兆198億円、連結従業員数は1,421名(2023年3月末時点)にのぼる。
同社は、荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田県秋田市)を傘下に持ち、東北地方を中心に銀行業、クレジットカード業、信用保証業、リース業、投資業など多岐にわたる金融サービスを提供している。 2027年1月1日には、荘内銀行を存続会社、北都銀行を消滅会社とする吸収合併方式により、両行を統合し、新たに「株式会社フィデア銀行」が誕生する予定である。新銀行の本店所在地は山形県山形市本町一丁目4番21号となり、代表取締役頭取には現北都銀行取締役専務執行役員の佐藤敬氏が就任する予定である。
この合併により、フィデアホールディングスは、地域経済の活性化や持続可能な社会の実現に向けた取り組みを一層強化し、東北地方を代表する名門企業としての地位を確立している。
14 位 仙台ターミナルビル(仙台市) 売上高 580 億円〈2024/3 単〉
名門ポイント:JR 東日本子会社。駅ビル「S-PAL 仙台」を核に 800 店舗を運営。東西自由通路商業区画の通行量増で物販収入が拡大し、2024 年度は過去最高売上を更新した。
13 位 藤崎百貨店(仙台市) 売上高 610 億円〈2024/2 単〉
名門ポイント:藤崎百貨店は、1819年に仙台で創業された老舗で、200年以上にわたり地域に根ざした経営を続けている。初代・藤崎三郎助が太物商「得可寿屋(えべすや)」を開業し、1919年には陳列式店舗を建てて百貨店化、1932年には鉄筋コンクリート造の新館を完成させ、本格的な百貨店としての営業を開始した。 藤崎は、仙台市青葉区一番町に本店を構え、東北エリアに約20店舗を展開している。地域密着型の経営を貫き、地元の祭りやイベントへの参加、地域連携の商品開発などを積極的に行っている。
また、藤崎百貨店の本館屋上には「藤崎えびす神社」が祀られており、商売繁盛や防災招福の神として多くの信者を集めている。同社は、長い歴史と地域との深い関わりを持つ名門百貨店として、今後もその伝統と革新を融合させながら発展を続けていくことが期待される。
12 位 東北発電工業(仙台市) 売上高 662 億円〈2023/3 単〉
名門ポイント:東北電力系の発電・変電専門会社。2023 年 3 月期単体売上高 662 億円。送電鉄塔の塗装ロボットと赤外線ドローンにより、保守コストを 20%削減(技報 Vol.58)。女川原発更新、洋上風力 EPC が伸長。
11 位 高速〈包装〉(名取市) 売上高 1,062 億円〈2023/3 連〉
名門ポイント:株式会社高速(こうそく)は、1966年に設立された宮城県仙台市宮城野区に本社を置く、食品軽包装資材の専門商社である。同社は、食品容器やフィルム、ラミネート、紙製品、包装機械・設備など、約14万点に及ぶ商品を取り扱っており、業界内での豊富な品揃えと提案力を強みとしている。全国に54の営業所を展開し、地域密着型の営業活動を展開している。また、グループ企業との連携により、商品開発力や物流力を高め、顧客の多様なニーズに対応している。2024年3月期の連結売上高は1,062億1,697万円、従業員数は連結で2,335名にのぼる。
同社は、包装資材業界で唯一の東証プライム上場企業であり、業界トップクラスの売上高を誇る。また、地域限定正社員制度の導入など、多様な働き方を推進し、社員のライフプランやキャリアプランに配慮した人事制度を整備している。これらの取り組みにより、株式会社高速は、宮城県を代表する名門企業としての地位を確立している。
10 位 国分東北(仙台市) 売上高 1,138 億円〈2022/12 単〉
名門ポイント:国分グループ本社の地域子会社。2022 年 12 月期単体売上高 1,138 億円(官報公告)。仙台 RDC で音声認識ピッキング「VoCollect」を導入し、人時生産性を 14%向上(社内事例資料)。地産地消ブランド 1,200 アイテムを専用什器で展開し、県産米粉 PB 菓子を関東まで販路拡大。
9 位 七十七銀行(仙台市) 経常収益 1,505 億円〈2024/3 連〉
名門ポイント:七十七銀行(The 77 Bank, Ltd.)は、1878年(明治11年)12月9日に「第七十七国立銀行」として仙台市で創業された、東北地方を代表する地方銀行である。行名は、国立銀行条例に基づき全国で77番目に設立されたことに由来する。創業に際しては、実業家・渋沢栄一の支援を受け、同行の発展に尽力した 。本店は仙台市青葉区中央三丁目3番20号に位置し、2024年3月末時点での総資産は約10兆4,711億円、預金・譲渡性預金残高は約8兆9,628億円、貸出金残高は約5兆8,674億円に達している 。
1932年(昭和7年)には、東北実業銀行および五城銀行との合併を経て、現在の「株式会社七十七銀行」として再編され、以降、東北地方最大規模の地方銀行として地域経済を支えている 。また、同行は宮城県および仙台市などの指定金融機関として、地方自治体の財務管理や公共資金の運用にも携わっている 。近年では、地元企業の海外展開を支援するため、上海やシンガポールに駐在員事務所を設置し、アジア地域とのビジネス連携を強化している 。七十七銀行は、地域密着型の金融サービスを提供しつつ、グローバルな視点を取り入れた経営を展開することで、東北地方の経済発展に寄与し続けている。
8 位 ユアテック(仙台市) 売上高 2,431 億円〈2024/3 連〉
名門ポイント:ユアテック(株式会社ユアテック)は、宮城県仙台市に本社を置く、東北電力グループの中核を担う総合設備エンジニアリング企業である。1944年の創立以来、電力インフラをはじめとする社会基盤の構築と維持に取り組み、東北地方を中心に全国へと事業を展開してきた。
同社は、電気設備、空調・給排水衛生設備、情報通信設備の設計・施工から保守・管理までを一貫して手がける体制を整えている。また、発変電、送配電などの電力流通設備の建設・保守や、再生可能エネルギー関連工事、土木・建築工事にも対応し、ライフラインのトータルサポーターとしての役割を果たしている 。
従業員数は3,796名 。国内では東北6県と新潟県を中心に81の事業所を展開し、海外にもベトナムやミャンマーなどに拠点を持つ 。また、ユアテックグループとして16社を擁し、地域密着型のサービス提供を強化している。ユアテックは、「安全」「品質」「信頼」の追求を企業理念に掲げ、災害時の迅速な復旧対応や再生可能エネルギーの導入拡大など、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを積極的に行っている 。これらの実績と姿勢により、同社は東北地方を代表する名門企業としての地位を確立している。
7 位 東京エレクトロン宮城(大和町) 売上高 3,306 億円〈2024/3 単〉
名門ポイント:半導体製造装置大手・東京エレクトロンの主力生産子会社。2024 年 3 月期単体売上高 3,306 億円(官報公告)。大和工場はクラス 100 クリーンルーム 6 棟で EUV 対応エッチング装置を量産し、月産能力を前期比 1.3 倍へ拡張。工場屋根に 6.8 MW の太陽光を設置し再エネ比率 25%を達成。宮城県と共同で半導体技術者育成講座を開設し、年間“数百名規模”の技能認定を行い地域人材プールを拡大している。
6 位 やまやホールディングス(仙台市) 売上高 3,648 億円〈2024/3 連〉
名門ポイント:やまやホールディングス(株式会社やまや)は、宮城県仙台市宮城野区に本社を置く、酒類・食品の小売・卸売、通信販売、外食事業を展開する企業である。1952年に宮城県塩釜市で創業し、1970年に株式会社やまやを設立。現在は東証スタンダード市場に上場し、全国47都道府県に988店舗を展開している(2024年3月末時点)。同社は、酒類を中心とした嗜好品の専門店「酒のやまや」を展開し、豊富な品揃えと低価格を武器に、地域密着型の店舗運営を行っている。また、外食事業にも注力しており、2013年には「花の舞」「魚鮮水産」などを展開するチムニー株式会社を、2018年には「つぼ八」「茜どき」などを展開する株式会社つぼ八を連結子会社化し、事業の多角化を進めている 。
さらに、やまやグループは、酒類調達・卸売・物流を担う「やまや商流株式会社」や、日本酒の製造・販売を行う「大和蔵酒造株式会社」などを傘下に持ち、製造から販売までの一貫体制を構築している。これにより、品質管理の徹底と効率的な物流体制を実現し、競争力を高めている 。
やまやホールディングスは、地域に根ざした経営と事業の多角化を通じて、宮城県を代表する名門企業としての地位を確立している。
5 位 カメイ(仙台市) 売上高 5,722 億円〈2024/3 連〉
名門ポイント:カメイ株式会社は、1903年(明治36年)に創業された宮城県仙台市に本社を置く老舗企業である。創業以来120年以上にわたり、エネルギー、食品、医療、建材など多岐にわたる事業を展開し、東北地方の経済と生活を支えてきた。2023年3月期の連結売上高は5,512億円、従業員数は5,610名にのぼる 。
特にエネルギー事業では、全国に276か所のガソリンスタンドを展開し、地域のインフラを支える重要な役割を果たしている。また、調剤薬局や食品流通センターの運営など、地域住民の生活に密着したサービスを提供している。さらに、国内外に78社の関係会社を持ち、グローバルな事業展開も進めている 。
近年では、再生可能エネルギーへのシフトやサステナビリティへの取り組みを強化し、持続可能な社会の実現に貢献している 。このような多角的な事業展開と地域社会への貢献により、カメイ株式会社は宮城県を代表する名門企業としての地位を確立している。
4 位 バイタルケーエスケー・ホールディングス(仙台市) 売上高 5,874 億円〈2024/3 連〉
名門ポイント:バイタルケーエスケー・ホールディングス(VITAL KSK HOLDINGS, INC.)は、2009年4月に株式会社バイタルネットと株式会社ケーエスケーの共同株式移転により設立された医薬品卸売業界の大手企業である。本社は東京都中央区に、本店は世田谷区に構え、東証プライム市場に上場している。2024年3月期の連結売上高は5,874億円、従業員数は3,705名にのぼる 。同社は、バイタルネットとケーエスケーを中核とする持株会社として、医薬品卸売事業を中心に、薬局事業、動物用医薬品卸売事業、介護サービスなど多岐にわたる事業を展開している 。特に東北地方(青森県、岩手県、宮城県)において強固な営業基盤を築いており、地域医療を支える重要な役割を果たしている 。
また、同社はサステナビリティへの取り組みを強化し、環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視した経営を推進している。これにより、持続可能な社会の実現に貢献しつつ、企業価値の向上を図っている。これらの実績と取り組みにより、バイタルケーエスケー・ホールディングスは、医薬品卸売業界における名門企業としての地位を確立している。
3 位 アイリスオーヤマ(仙台市) 売上高 7,540 億円〈23/12 公表〉
名門ポイント:アイリスオーヤマ株式会社は、宮城県仙台市に本社を置く生活用品メーカーであり、1971年の設立以来、ユーザー目線に立った製品開発を強みとしてきた。同社は、家電、収納用品、ペット用品、園芸用品など多岐にわたる商品を展開し、2024年度のグループ売上高は7,760億円に達している 。アイリスオーヤマの特徴は、製造から販売までを一貫して手がける「メーカーベンダー」モデルを採用している点にある。これにより、生活者のニーズを迅速に製品開発に反映させる体制を構築している 。また、国内外に37の工場を持ち、物流ネットワークを活用して全国への迅速な商品供給を実現している。
同社は、LED照明やロボティクス事業など、法人向けのBtoB分野にも進出し、清掃ロボット「Whiz」シリーズは世界出荷販売台数累計約2万台を達成するなど、業務用サービスロボット市場でも存在感を示している 。さらに、アイリスオーヤマは、東北楽天ゴールデンイーグルスやベガルタ仙台のスポンサーを務めるなど、地域社会との連携を重視しており、地元経済への貢献も評価されている。これらの取り組みにより、アイリスオーヤマは、生活者の視点を重視した製品開発と多角的な事業展開を通じて、宮城県を代表する名門企業としての地位を確立している。
2 位 トヨタ自動車東日本(大衡村) 売上高 8,103 億円〈2023/3 単〉
名門ポイント:東北 4 工場でコンパクトカーを一貫生産。2024 年に水素エンジン試験ラインを導入し、次世代動力の実証を進める。
1 位 東北電力(仙台市) 売上高 2 兆 8,300 億円〈2024/3 連〉
名門ポイント:東北電力株式会社は、1951年に設立された、東北6県および新潟県を供給エリアとする電力会社である。本社は仙台市青葉区に位置し、2024年3月期の連結売上高は2兆8,178億円に達し、宮城県内企業で首位を占めている 。同社は、火力、水力、地熱、原子力など多様な電源を保有し、地域のエネルギー安定供給に貢献している。特に、女川原子力発電所は、2011年の東日本大震災後の再稼働に向けた安全対策が進められており、地域の復興とエネルギー供給の両立を目指している。
また、東北電力は、再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進など、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを積極的に行っている。これらの実績と取り組みにより、東北電力は、東北地方を代表する名門企業としての地位を確立している。
総評
宮城県トップは東北電力の 2 兆 8,300 億円。トヨタ自動車東日本とアイリスオーヤマが 5 兆円規模のモノづくり集積を形成し、バイタル KSK・カメイ・やまやの流通大手が生活インフラを支える。半導体、再エネ、食品卸、メディアが多層に重なり合い「製造+物流+情報」の産業立体構造が浮かび上がる。震災復旧とデジタル化を経て、各社はドローン保守・AI倉庫・再エネ導入といった DX/GX 施策を加速。域内需要の縮小を越境販売・海外拠点で補完する動きが鮮明だ。県内スタートアップ投資や人材育成による“次の柱”創出が今後の鍵となるだろう。