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共産党の滋賀・中山和行県議“人殺し”発言で謝罪 自衛隊家族会が抗議、支持率9割の世論が示した「常識」の力

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自衛隊 イメージ

京都新聞などによると、滋賀県議会の中山和行議員(日本共産党)は3月19日の本会議で、陸上自衛隊饗庭野演習場で行われる陸自・米陸軍の共同実動訓練を「人殺しの訓練」「人殺しのための訓練」と表現した。発言は議事録に残り、県自衛隊家族会は「隊員に対する侮辱で差別にもつながる」と強く反発。

4月15日付で有村國俊議長に抗議文を提出した。18日の議会運営委員会で共産党県議団の節木三千代代表が「不適切だった」と謝罪し、有村議長は節木代表を口頭で厳重注意した。​

 

世論調査が映す圧倒的な支持 自衛隊への好印象90.8%

内閣府が令和4年11月に実施した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」では、自衛隊に「良い印象」を持つ人が90.8%、「悪い印象」は5.0%に過ぎなかった。「関心がある」と答えた割合も78.2%に達し、災害対応や国際協力活動への評価が背景にある(政府オンライン調査)。

これほど高い国民的支持の下では、自衛隊員を十把ひとからげに「人殺し」と断じるレトリックは、もはや社会的に許容されない。今回、家族会の迅速な抗議と県議団の謝罪が実現した事実は、政治家と有権者双方の感覚が常識的な地平で共有されつつあることを示す。

SNSでも「謝罪だけでは不十分」の声

X上では〈「国を守るため訓練する隊員に対してあまりに酷い発言」〉〈「発言の場を問わず再発防止策を明確に示すべきだ」〉といった投稿が相次いだ。

ジャーナリストの不破雷蔵氏は調査結果を紹介し「自衛隊を肯定的に見る人は九割を超える」と指摘した。世論の温度差は、謝罪の一件を“特殊事例”として片づけず、政治家の発言責任をより厳しく問い直す流れを加速させている。

 

「人を守る組織」と「人殺し」の距離

自衛隊は災害派遣や邦人救出、国際PKOなど、平時から生命を守る任務を担う。安全保障環境が厳しさを増す中、実動訓練の質を高めることは不可欠だ。言論の自由を前提としても、現実の任務を理解しないままの攻撃的なレッテル貼りは、当事者や家族のみならず納税者の信頼も損なう。

謝罪に追い込まれた経緯は、「議場であれば何を言っても許される」という旧来の特権意識が通用しなくなった証左であり、健全な民主社会にとって小さくない前進と言える。

知識人の“違憲”レッテル――50年代から90年代まで

自衛隊は1954年の発足直後から「憲法九条に違反する軍隊」との批判を浴びてきた。60年安保闘争では多くの作家や学者が国会前に集まり、日米安保条約と一体で自衛隊を敵視した。70年には作家・三島由紀夫が市ヶ谷駐屯地で自衛隊に決起を促す事件を起こし、逆に文化界は「軍事色復活」への警戒を強めた。

昭和後期の大学では「知識人なら左派であるべき」という空気が支配し、自衛官の子どもが日教組系教師から差別された例も報告されている。​

湾岸戦争(1991年)で日本が巨額の資金提供だけを行った際も「血を流さず金で済ます国家」と叩かれ、92年のPKO協力法成立時には「海外派兵は戦争への道」との反対声明が文化人から相次いだ。

それでも自衛隊は口論ではなく行動で応えた。93年カンボジアPKO、95年阪神・淡路大震災、2011年東日本大震災――派遣先での献身は「違憲」の烙印を淡々と塗り替え、世論は支持へ傾いた。

 

「沈黙の広報」が世論を変えた

長年、制服組は政争を避けるため正面からの論争を控え、現場の行動を通じて評価を得る「沈黙の広報」に徹した。結果、90年代後半には防災訓練への自治体参加が常態化し、「自衛隊がいて良かった」が災害報道の決まり文句になった。

世論調査で支持率が九割に達した今日、政治家の過激なレッテル貼りが即座に抗議と謝罪を招くのは、半世紀にわたる“無言の自己証明”の帰結である。

常識への回帰と今後の課題

 

自衛隊批判が思想的ファッションだった時代は遠い。だが口を閉ざすだけでは誤解は残る。防衛省は昨年、創設70年を機に活動史をまとめ、オンラインで公開した。

歴史を語ることは「違憲論」への最良の反論でもある。今回の謝罪劇は、政治家だけでなく文化人・知識人にも、事実に基づく議論を求める時代になったことを物語る。常識が主役となった今、建設的な安全保障論議こそが次の課題だろう。

政治家の言葉が問われる時代へ

 

今回の騒動は、一部政治家の過激な修辞よりも、家族会や有権者が示した常識の強さを浮き彫りにした。防衛政策への賛否はあっても、現場で汗を流す隊員への敬意は社会の共有財産だ。世論調査で示された数字とSNS世論の反応は、議場の「空気」が変わりつつある現実を裏づける。

謝罪で幕引きとするのではなく、議員自らが防衛現場を視察し、訓練の意義を学ぶ機会を持つことこそ再発防止への近道となるだろう。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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